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アフラック様 両立支援に対する取り組み

GHO連載企画 治療と仕事の両立支援に取り組む企業様インタビュー

高齢化社会・女性の社会進出・医療技術の進歩・定年制度の見直し等

企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。

企業を支える社員が安心して、ライフイベントと仕事の両立を図れる環境を提供する事で

経営陣と共に、企業を成長させる一員として社員が独自のスキルを使い活躍してくれることでしょう。

そこで先陣をきって両立支援の取り組みを行っている、企業様の事例からヒントを得られるようインタビューし、ご紹介していきます。



お話を伺った方:


アフラック生命保険株式会社

人事部健康推進室長

佐柳みすず様 


目次:

・アフラックとがん治療と仕事の両立

・両立支援の取組はボトムアップで作り上げる

・All Ribbonsについて

・経験者の声を制度に反映する

・がん経験者だけでなく全社員の働き方を考える

・これから両立しようとする個人へのメッセージ

・これから両立支援に携わる担当者へのメッセージ


アフラックとがん治療と仕事の両立


アフラックは、日本で初めてがん保険を提供する保険会社として創業しました。以来、「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」という想いを大切にしており、現在は「『生きる』を創る。」というブランドプロミスを掲げています。こうした当社の理念に共感する社員は非常に多く、「がん・傷病 就労支援」は私たちにとっても大切なテーマと考えています。


ー「がん・傷病 就労支援」の必要性を社員が理解しているのは心強いですね


当社には、社員を大切にする企業風土として、企業理念にある「人間尊重」のほか、創業以来「人財を大切にすれば、人財が効果的に業務を成し遂げる」という考え方があります。社員は私たちにとって、大切な仲間です。お客様だけでなく、仲間である社員が「がんや病気にかかっても安心して自分らしく働く」ことを、会社として支援するのは当たり前という考えがありました。


両立支援の取組はボトムアップで作り上げる


就労支援の制度に関しては、以前から整備しており、罹患した社員本人、上司、産業医、人事担当者で対応していました。ですが、多くの社員にとっては、自分ががんや病気になったとき、どうすればよいのかわからないという現状もありました。がん対策基本法の改正もふまえ、企業としてしっかりがん就労支援に取り組む必要がある、そしてがん保険の会社としても誇れるものにしたい、という想いがあり、既存の取り組みに新たな取り組みを追加し、「がん・傷病 就労支援プログラム」として体系化しました。


ーどのようなプログラムか教えてください


サポート内容は、がんや病気にかかっても安心して自分らしく働けることを支援する為に「相談」「両立」「予防」という三つの柱を用意しました。このうち「相談(ピアサポート)」として、がんを経験した社員コミュニティ「All Ribbons」を発足し、メンバーのアイディアで、社員に対しての相談窓口などを行っています。


ーがん罹患者のコミュニティメンバーの公募について、反応はいかがでしたか


実はこのコミュニティは、社内のがん経験者の声から生まれました。就労支援の制度を整備しようと考え、当時の人事担当者が、罹患した社員⼀⼈ひとりに「会社にどういう⽀援をしてほしいか」と聞くところから始めた結果、⼀番多かったのは両立支援やお金のことではなく、「仲間と語り合いたい」「病気になった⼈に⾃分の経験を伝えたい」という声だったそうです。そうした声もあってメンバーを公募することになったとき、おそらく、声を寄せてくれた社員の何人かは参加してくれるのではないかという思いはありましたが、13名(発足当時)の社員が志を持って集まってくれたのは嬉しかったです。


ー自分の経験を企業に還元してくれる社員の存在はありがたいですね


公募する時、特に気をつけたのは、守秘義務です。コミュニティに参加することは上司に必ずしも伝える必要はないこと、他の参加者の罹患についての開示・非開示の希望をお互い尊重すること、そして事務局側も限られた人事部のメンバーのみで対応することなどです。こうした安全な環境であることを公募の際にしっかり明示していたため、安心して参加しようと思った、という声をメンバーから後に聞くこともありました。


ー13人の皆さんは、どんな思いで参加してくださったのですか?

メンバーは男女半々でしたが、自分の体験談をコミュニティのメンバー内で共有するだけではなく、「自分の経験が役に立つのであれば、会社の制度や働き方を考える上で活かして欲しい」「会社のビジネスに役立てたい」という想いを持って参加された方が多かったです。


ーコミュニティを立ち上げたことについてのトップの反応はいかがでしたか。


All Ribbonsの立ち上げは、ボトムアップで始まった取り組みでしたが、当社ならではの取り組みとして、活動を応援してくれています。


All Ribbonsについて


がん経験者の皆さんと活動するコミュニティの名前は「All Ribbons(オールリボンズ)」です。がん啓発では、乳がんの「ピンクリボン」のように、部位により様々な色で表す事が多いのですが、メンバーの案により、様々な部位の経験者が集まってつながる絆をあらわす意味として、この名前にしました。今は22名で活動していますが、男女比は半々で、世代も30-50代と様々です。他社の方からは、男性が半数もいることに驚かれることもあります。一般的に、男性は病気が理由でキャリアが途絶える事を懸念して、罹患したこと自体を言わない方が多い、ということも聞きます。当社は、がん保険の会社ということもあるかもしれませんが、病気について話すことがはばかられない、キャリアに傷がつかないという会社との信頼関係があるのも⼤きいかもしれません。


ーAll Ribbonsの具体的な活動を教えてください

活動内容は大きく分けて3つ。「ピアサポート」「両立環境づくり」「ビジネス支援」です。この中で一番力を入れている「ピアサポート」では、メンバー同士の交流、ポータルサイトでの体験談紹介を行っています。体験談に載せる内容も、メンバー全員で話し合い、共通して知りたかったことや気になる項目を選びました。両立について工夫したこと、苦労したこと、職場での伝え方、そのほか影響があったこと、感じたことなどをありのままの言葉で、匿名で載せています。掲載したときは、多くの社員から大きな反響がありました。その後も、社員が罹患した際に、「いろいろなメンバーの体験談を見て安心できた、ありがたかった」という声も届いています。


ー同じ職場の人の伝え方などが知れるのは安心材料になりますね


体験談を見て、「この人に直接相談したい」という場合は、このポータルサイト経由で相談が出来ます。顔を出して情報公開している方には直接連絡できますし、匿名で相談したい場合は健康推進室の産業医・保健師に相談メールが届くようになっていて、産業医からAll Ribbonsのメンバーに、お互いが誰かわからないよう氏名などをマスキングして、回答依頼をするようにしています。そしてまた産業医・保健師から相談者へ返信するので一切個人情報が漏れないように配慮しています。


ー「両立環境づくり」の取り組みはどのようなことを行っていますか。


「がん・傷病 就労支援プログラム」の2つめの柱「両立」においても、例えば「啓発活動」

で協力してもらっています。新型コロナウイルスが流行する前は、社員の前で体験談を話すパネルディスカッションを東京・大阪などで公募形式により行ったり、会社のオープンスペースを使い「All Ribbons Café」として、双方向で対話する機会を設けたりしました。昨年は、移動がままならず、オンラインでのパネルディスカッションを開催しましたが、実はこれが思いのほか好評でした。当社は全国に支社やオフィスがあるので、興味があっても東京や大阪に来ないと参加できなかった社員も、気軽に参加できるようになったのはよかったですね。これからもこうしたスタイルも継続していけたらと思います。


ー両立においては、管理職のサポートも大切ですよね。

罹患した社員の相談を最初に受けるのは、人事や産業医ではなく現場の上司です。そこで、どの職場においてもしっかり対応ができるようになってほしいという想いのもと、2019年に部下のいる管理職全員に、「職場の“がん治療と仕事の両立支援”講座」の研修を実施しました。がん患者と向き合う医師の講話や、罹患した社員と上司のやり取りを想定したロープレ等の研修です。その研修に先立ち、「実際の社員の声を聴いた方が、より必要性が実感できるのではないか」と役員からもアドバイスをいただき、まずは全管理職が集まる会議で、All Ribbonsによるパネルディスカッションを実施しました。多くの管理職が熱心に彼らの話を受けとめ、アンケートでは「実際の社員の声を聴き、就労支援の必要性を実感した」「共に働くメンバーの中にこうした方達がいる事が誇らしい」など、多くの反響がありました。


経験者の声を制度に反映する


All Ribbonsのメンバーには、「制度・運用」に関する意見交換にも協力してもらいました。従来から両立支援の制度は整備されていたとお話しましたが、治療の変化、例えば以前は入院治療だったものが通院でもできるようになり、仕事をしながら治療ができるようになりました。All Ribbonsのメンバーの声を聴くことで、今までは長期間休んで治療に専念することを目的としていた制度の見直しの必要性や、既存制度における利用する為のちょっとした制約が利用の妨げになっている事などを知る機会となりました。その結果、具体的な例として、通院治療にも利用できるよう時間単位年休の導入や、従来は一定日数以上の時に使用することとなっていた積立年休(ストック休暇)や傷病欠勤を、1時間単位から申請できるように変更しました。


ー特徴的な制度として「リボンズ休暇」もありますね

リボンズ休暇ができるまで、何度も議論を重ねました。人事制度上どうしても若い社員や、社歴の浅い社員は休み自体が少なくなります。All Ribbonsとの議論の中で、メンバーから「有給休暇等の休みが、治療ですべてなくなってしまったら会社を辞めないといけないという漠然とした不安がある」という切実な胸の内を聞きました。「有給ではなく、無給でもいいので、会社に居場所がほしい」という声もありました。そこで、10日分は有給、その後は日数無制限(無給)で付与する休暇として「リボンズ休暇」ができました。この制度は、がん治療を理由で会社を辞めさせない、という当社の決意を示したものだと思っています。この制度を利用した社員はすでに7名います。


ー日数制限のない休暇制度はすごいですね


他社の事例を調べたり、罹患者の声を聞きながら、当初は何日あったら十分なのかを検討したのですが、聞けば聞くほどがん治療は個別性が高いことがわかり、何日あればよい、という正解がありませんでした。そこで、思い切って利用日数無制限にしました。有給休暇を使い切らなくても、産業医ががん治療に必要と認めた場合、1時間単位で利用できるようにもしました。


ー導入時に、反対の声はなかったですか?


特に反対はありませんでしたが、しいて言うならば「なぜがんだけが対象なのか」という声はありました。それに関しては「がんは他の病気と異なり、再発リスクや長期治療という特性があるからこそ必要である」という産業医からの見解をふまえ、理解を求めていきました。こうした制度のことや、自分や周囲ががんにかかったら、どのように対応すればよいかをまとめた「がん・傷病 両立支援ハンドブック」をまとめ、関係する情報をポータルに一元化し、公開しました。すべての社員にこうした存在を知らせたことで、社員からも「自分がもしがんにかかったとしてもこうした制度がある事で安心感が持てる」という肯定的な声が沢山寄せられました。


がん経験者だけでなく全社員の働き方を考える


今は、新型コロナウイルスの影響で、多くの企業でリモートワークが主流になりつつあると思いますが、当社では、それ以前から私傷病、育児、介護等の理由に関わらず、全社員が自分の働き方にあった「時間」「場所」の制約がなく、柔軟に働ける制度を利用して働けるようにしていました。フレックスタイム制度や時間単位年休、シフト勤務や在宅勤務等ですね。特定の事由の社員のみ使えるとなると、周りに遠慮したり、かえって使いにくいということもあるかもしれません。誰もが気兼ねなく利用できるということは、いい意味で「お互い様」となり、利用しやすい環境づくりにつながるように思います。緊急事態宣言が発出され、在宅勤務を前提とした働き方が一気に浸透しましたが、もともと多様な働き方の環境が整備されていたので、比較的スムーズに対応できたように思います。


ー「がん・傷病 就労支援プログラム」の3つめの柱の「予防」ではどんなことをされていますか。


早期発見のためのがん検診の受診の徹底と、禁煙推進です。がんが見つかったとしても、早期発見・早期治療できれば、仕事に復帰する負荷、仕事への影響も軽く済むかもしれません。そこで、啓発が必要だと思っています。健康診断と合わせてがん検診を受診できるようにし、会社として検診を受けやすい環境を整えています。例えば受診日の勤務日扱いや、交通費を支給したり、がん検診も法定より受診年齢を引き下げ、若いうちから受けやすいようにしています。

禁煙については、「Aflac Smoke-free Program」を2018年から導入、ビジネス禁煙365(就業時間内全面禁煙)や、卒煙プログラムなどの取り組みを行っています。


これから両立しようとする個人へのメッセージ


会社の仕組みも以前と比べると柔軟になってきています。急に辞めなくてもいい、辞めてしまうのは勿体ないと思います。どう仕事と治療を両立していくかを過度に負担に思わず、周りと相談しながら進めていってほしいです。周りに申し訳ないという過度な遠慮はいらないと思います。その中では、できないことより、できることに目を向けて考えていくことが大切だと思います。

仕事がある事で生きる力が湧いてくることはあります。以前「病理診断が出て確定診断がつくまでの1カ月間が一番不安だった」という声を聞きました。仕事しながら病理結果を待っていたとき、家でじっとしているより気持ち的にも支えられたと。かつては「がん=死」「仕事は辞めないといけない」というイメージが強かったかもしれませんが、治療の進化により、両立している社員も増えています。

「がんになっても自分らしく働く」ことをあきらめないでください。


これから両立支援に携わる担当者へのメッセージ


両立支援制度を整えるというのは、確実に社員のエンゲージメントを高めます。

「もしも」という時安心できますし、両立しながら働き続ける社員の存在は他の社員の励みにもなります。しっかり取り組み、社員の帰属意識、ロイヤリティを高めるということをふまえて、制度や運用を整備されるとよいのではないかと思います。がんはベテランとなる中高年層になるほど見つかりやすい病気ですが、企業の仕組みが追いつかない事で、辞めてしまわれると大変な人財の損失になります。誰もに起きうること、当然のものとして支えあえる環境づくりが重要と考えています。


ーがん経験者の声を組織の力に変えていく。まさにダイバーシティ&インクルージョンな組織として御社が存在している事がわかりました。今後とも御社のご活躍を応援しております。本日はどうもありがとうございました。


2021年4月15日

聞き手:がんと働く応援団 吉田ゆり

文 章:吉田ゆり

写 真:アフラック生命保険株式会社提供

企業の取り組みのご紹介はいかがだったでしょうか。 

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