●経営者のための「がん防災マニュアル」中小企業版 社長インタビュー
相模原市版からのご紹介です。
話し手:
有吉 正一 代表取締役社長
本州リーム株式会社について
1968年に米国リーム社、本州製紙(株)、長瀬産業(株)の合弁会社として発足。ファイバードラムの製造・販売、各種食品加工機器等の輸入販売を実施。王子ホールディングスグループ。
本社:神奈川県相模原市
社員:約34名 (2024年現在)
社員の安全と健康は社長のリーダーシップで
● 御社の人材の採用・育成に関する取り組みをお聞かせください。
人材の採用は年々厳しくなっています。当社もいわゆる人材紹介会社などを通じて採用活動を行うようになりました。また、育成面も定着率向上に重要だと考えています。社員の能力やスキルが向上すれば、社員のやりがいや満足度が高まり、定着率も向上すると考えています。ただし、人材育成は体系的かつ計画的な実施が重要であり、中小企業ではそのための時間を取るのが難しく悩ましいところです。現状は製造部門では品質マネジメントシステムISO9001に基づき、年間の教育計画に沿ってOJT を実施しています。また、グループの親会社による研修なども活用しています。今後は健康経営による社員の健康増進の観点もより重要になってくると考えています。
●社員の健康面に関して実施されていることは
50人未満の事業場に実施義務はありませんが、ストレスチェックを実施しています。健康診断は検診車に来てもらうことで 100%の受診率です。診断結果でフォローが必要な社員には、相模原地域産業保健センターに保健指導してもらっています。また、二次検診が必要な社員には継続的な声掛けが重要であると考え、業務部長が中心となり一人ひとりに声をかけています。健康診断の数値の悪化をきっかけに喫煙をやめる社員も増え、喫煙人口は徐々に減っています。
また、お弁当代を半額支給しています。社員に栄養バランスの取れた食事をとってほしいとの思いから始めましたが、今ではほとんどの社員がお弁当を注文しているようです。
社員には健康で長く働いてもらいたいのはもちろんですが、私の個人的な願いは、会社を辞めた後も健康で元気に生活してもらうこと。そのためにできることは少しずつ実施していきたいです。
● 退職後のことも見据えて、とは素晴らしいお考えですね。一方で、現在がん治療中の社員がいらっしゃると伺いましたが、どのようにされていますか。
はい。この社員は先ほどの健康診断からがんが見つかりました。今は、抗がん剤治療が続いて体力が落ちているのでフルタイムは難しいが働き続けたい、という本人の意思があり、会社としても継続がありがたいことからパート勤務していただいています。具体的な業務内容は、直属の上司が本人と相談しながら、体力に見合ったものを調整しています。 この社員が受診状況や主治医の意見を定期的に業務部長に報告してくれているので、その際に症状や体調の変化に合わせて業務の再調整が必要かどうかを確認できています。こうした対応は
就業規則で定めたわけではないですが、柔軟に対応していければと思っており、本人の回復を心から願っています。
●このようなケースでは人手不足が懸念されますが、対策は。
当社の製品は受注生産のため、受注のタイミングで急に忙しくなることがあり、製造の繁閑差が大きいです。昔であれば深夜残業で対応することもありましたが、今はそういう時代ではなく、安全面からも適していません。そのため、他部署の社員に応援に来てもらう体制をとっており、今回のケースでは最終的に新たに1人を採用しました。ただ、採用に至るまでに3カ月~6カ月程度かかるので、その間は社員同士が補いあいながら業務を行っています。これは病気に限らず、育児や介護休暇でも同様です。育児をしながら時短勤務で働いている社員もいますが、同じ部署の他のメンバーが少しずつカバーしています。
●お話を伺っていると非常に風通しの良い職場のように感じます。
そうでしょうか。私自身が生え抜きの社長であることもあり、社員からの相談はよくあります。また、業務部長が積極的に社員に声をかけているので、部長に相談すれば安心という雰囲気ができているかもしれません。
当社では年に1回社員にコンプライアンス・アンケートを実施しています。相談窓口も、当社の業務部のほかにグループ会社や法律事務所など 3カ所窓口が用意されています。社員としては問題を伝えやすい雰囲気があり、経営側もそれを受け止める準備ができているかもしれません。個人的に組織に大事なのは「利他の心」だと思っています。相手を思いやる、自分から動く、そうすると良いフィードバックが戻ってくるものです。こうした社員が集まると風通しの良い組織になるのではないかと思っております。ありがたいことに当社には素直でまじめな社員が多いので、この考え方も理解してくれているのではないでしょうか。
●社長として心がけていらっしゃることがあればお話しください。
社員は家族だと思っています。社員の安全や健康に配慮することは、長く一緒に働き続けるためにも大切です。こうした取り組みはトップダウンが必要だと感じます。経営課題は多数ありますが、バランス感覚を持って実施していきたいです。
2024年4月19日
聞き手:がんと働く応援団 野北まどか、芝原有可子
文 章:野北まどか
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