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株式会社JVCケンウッド・エンジニアリング様    両立支援に対する取り組み

更新日:2020年9月3日

GHO連載企画 治療と仕事の両立支援に取り組む企業様インタビュー

高齢化社会・女性の社会進出・医療技術の進歩・定年制度の見直し等

企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。

企業を支える社員が安心して、ライフイベントと仕事の両立を図れる環境を提供する事で

経営陣と共に、企業を成長させる一員として社員が独自のスキルを使い活躍してくれることでしょう。

そこで先陣をきって両立支援の取り組みを行っている、企業様の事例からヒントを得られるようインタビューし、ご紹介していきます。

かながわ 治療と仕事の両立推進認定企業

株式会社JVCケンウッド・エンジニアリング様の取り組み

話を伺った方:株式会社 JVCケンウッド・エンジニアリング

取締役社長 阿部 重徳 様

コーポレート部 長谷川 登様

株式会社 JVCケンウッド

企業コミュニケーション部 広報・IRグループ 長谷川 美峰子様


 阿部 重徳社長    長谷川 登様    長谷川 美峰子様




―本日は宜しくお願い致します。まず初めに御社の紹介をお願い致します。


(阿部社長)

私どもは、JVCケンウッド・エンジニアリングという会社ですが、前身のケンウッドエンジニアリングという会社は、1988年に設立しておりますので今年で33年目になります。我々はJVC ケンウッドグループの開発請負を行なっています。経営方針として掲げているのは「人間中心」。我々は、人材による技術の供給によって貢献している、つまり人材が全てのリソースとも言える業態です。そういう意味でも「人間中心」という理念で、「社員が自らの可能性を最大限に引き出せる仕組み作り」というのを経営理念に掲げてきました。

―そうすると社員の働き方や満足度などは気になるところですね


(阿部社長)

そうですね。福利厚生を社会のニーズに沿ったかたちで人事部門と整備してきました。2011年度から、行政や、東京都、神奈川県からの勧め等もあって、各種認定制度に申請をして参りました。

2011年に東京都の「ワークライフバランス企業」認定、八王子市の「子育て応援登録企業」、神奈川県の「仕事と介護の両立支援の取り組み企業」や、「子ども・子育て推進支援企業」など認定を頂いています。

―ちゃんと環境を整えながら取得されたのですね。


(阿部社長)

はい、その他にも労働安全衛生関係につきましては、2017年10月には「健康経営宣言」を行っております。その中で、長時間労働対策やメンタルヘルス対策を、「ホワイト企業500」に登録されている親会社のJVC ケンウッドと連携しながら対策を進めて参りました。その後も、東京都の「健康経営企業宣言」を行い、2020年1月には、横浜市の「横浜健康経営認証 最高位のトリプルA」企業として認証されることができました。その後も当社の取り組みが認められ、この4月、「かながわ治療と仕事の両立推進企業」認定をいただきました。

―実際各種制度を導入・運用する時、ご苦労はありませんでしたか?


(阿部社長)

従業員と一緒にやっていかないと、こういうものは取得できません。そこで、毎月従業員の代表とミーティングを行っています。職場の課題や、働きづらいところ等の改善点などを毎月意見交換し、制度や取り組みを充実させてきました。

―ちゃんと継続して現場とコミュニケーションを取るのは簡単そうで一番難しいところですよね。そこを毎月やられているのは素晴らしいですね。


(阿部社長)

我々はJVC ケンウッドの中で開発を請け負っているのですが、実は事業所が3ヶ所に分かれていて八王子、横浜は本社(神奈川区)と白山(緑区)があります。従業員が別々の場所に勤めているというのもありまして、なかなか日々接する機会がないので、そういう機会を作っていかないと、経営側と従業員の意思統一ができないというのが背景にありました。

―その取り組みは長いのですか?


(阿部社長)

当社は、2011年に日本ビクター株式会社と株式会社ケンウッドが統合した後、開発設計事業を行っていた両社の子会社同士が2015年に合併して誕生した会社です。各開発事業によって勤務地が分かれますので、長年従業員の間のコミュニケーションを丁寧に行うという事を大切にしてきました。

―治療を含むライフイベントと仕事の両立に取り組む想いを聞かせていただけますか


(阿部社長)

はい、我々はグループの中で開発設計を請け負っておりますので、時間をかけて技術スキルをもった人材を育成し、開発設計業務の稼働率を上げることで収益を上げています。例えばメンタル疾患で長期間働けなくなると、その方の報酬は当然いただけなくなりますので、十分な治療を行った上で仕事に取り組んで頂きたいと考えています。

―採用・育成は一番お金と時間と労力がかかりますよね


(阿部社長)

はい。新入社員で採用し、一人前になるには3年〜5年はかかります。人材は、我々の会社では一番大切な財産ともいえます。事前に環境を改善していく事で「病気にならない・させない、皆さんが気持ちよく働いて、自分の力を発揮できるような体制にする」というのが経営としても大変重要な視点になっています。

―では入ってきた社員にもこの健康マインドを伝える活動もされているのでしょうか?


(阿部社長)

はい、毎月各事業所毎に衛生委員会を開催していますが、健康経営関連の議題や健康プログラム等の希望意見を吸い上げて、健康イベント等開催時の参考にしています。各事業所に健康サポートセンターがありますので、情報交換をしたり、あとは健康診断も含め、

日頃から社員の健康を把握するようにしています。技術者は、普通の会社員と比べて、メンタル的なところでプレッシャーがかかる事が多いので、日頃から各職場で辛そうな人がいないか、全員で気をつけて見ていますあまり当社では多くありませんが、メンタル不調でお休みした方の職場復帰後のケアもマネージャーレベルでサポートする仕組みを取り入れています。

― 社員が一人で抱え込まない様に、周りでサポートする体制を整えているんですね。


(阿部社長)

はい。具体的な例としては、様々な開発案件の職場があり、開発職種がたまたま合わない場合があります。その場合は、人材ローテーション制度を利用して、別の開発職種に個人の希望で配属を変えられる取り組みをしています。

―仕事を我慢して辞めるケースはよく聞くので、そうなる前に対策が取れるのは素晴らしいですね。


(阿部社長)

やはり、一人で悩んで相談せずに辞めてしまう事を防ぎたいので通常のミーティングやチーム毎の情報共有が行いやすくするインフラを整えたり、何かあったら、すぐ周りに相談できるような雰囲気や環境つくりをしています。

―何かあってもすぐに相談できる風土がもうできているのですね。


(阿部社長)

そうですね。皆さん同じ開発業務の仕事をやっているので、立場的な事も含め相談しやすいかと思います。有休の取得率も非常に高くなっていますこれは、社員間のコミュニケーションが取りやすい事の結果として表れている数字かと思います。

―現場はもちろんの事、企業のスタンスとしてもライフイベントと仕事の両立を図るのは当たり前なんですね。


(阿部社長)

そうですね。育休を取得する男性もいますし、女性の技術者も増えていますので、常に誰かが子育てしているような感じです。他の企業では「育児休暇が取れない」という話も聞きますが、それは退職に繋がってしまいますので、当社では休暇が取りやすい雰囲気作りは重要だと考えています。

―復帰した後の方のキャリアステップはどのように設計されていますか?


(阿部社長)

「すぐ前の職場に戻り、以前のように仕事をする」というのは新たな生活様式との両立も難しいと思います。本人と希望を確認した上で別のお仕事をお願いする事があります。例えば、我々の内部で業務の改善をしたり、我々独自の取り組みをしながら本社に逆提案するプロジェクトがあるのですが、そこに半年位入っていただき、スキルをブラッシュアップしながら、時期を見て新たなプロジェクトに参加してもらう等しています。やはり、復帰の時は気を使います。そのステップのおかげか、育休明けで復帰せずに辞めた方はいないです。

―ちなみに、経営者としては長期的に休む方が増えると悩む事も正直あると思いますが本音としてはどうでしょうか?


(阿部社長)

我々としては、せっかく育った社員が能力を発揮できずに辞める選択をされることが非常にもったいないと感じております。したがって、ライフイベントとの両立により取得される長期休暇に関しては普通のものとして受け止めています。技術者ですので、日頃から開発案件によって他事業所へ異動があります。復帰後の異動についてもサポートがありますので特に苦労を感じた事はないですね。

―この制度面に力を入れた事での恩恵は組織にあったと感じますか。


(阿部社長)

この「かながわ 治療と仕事の両立支援推進認定企業」も含めホワイト企業である為の取り組みに力を入れてよかったと思っています。最近時代の流れもあり人手不足問題があり、一時期採用に苦戦しておりました。しかし、最近の方は、「働きやすい環境か?」という事を気にされる方が多いです。特にソフトウェア等の開発設計企業はブラックと言われるところも多いので、「技術を身につけたい、そして安心して働きたい」という技術者志望の方が、我々を見つけてエントリーしてくださるフックになっていると感じています。

―従業員の方はこの企業の取り組みをどう評価されていますか


(阿部社長)

私は2019年の4月に社長就任をしました。その時、全従業員と顔合わせを兼ねた懇談の時間を取りました。その中で、この会社に対するイメージを含め、ざっくばらんに話を聞いたのですが、その時言われたのが「この会社は休みが取りやすい」とか、もしくは「私、育休取りました」など話をしてくださる方が多くてびっくりしました。私は元々日本ビクターで働いていましたが「本体(親会社)と比べても、フレキシブルな働き方が身についているな」と思いました。

―チーム内でのコミュニケーションをうまくとれる仕組みができているから休みがとりやすいのかと思いますがどのように行っているのでしょうか


(阿部社長)

開発は細かいステップと共に行っていきます。マイルストーンがあって、そこに成果物を収めていくというのが開発の仕事の進め方で、進捗をチーム内で共有することができます。したがって「この人が休んでも今の所は大丈夫だ」周りもしっかり確認できているのが一役買っているかと思います。

―見える化されているということなんですね。


(阿部社長)

逆に進捗が遅れると、そこは残業してでも挽回しないといけません。しかし、やはり業務が「見える化」され、共有されているから休みが取りやすい。そういう風に繋がっているのかなと思います。

―今後御社の目指しているステージを教えていただきますか?


(阿部社長)

我々は技術開発でグループ全社に貢献しなければならないので、一人一人のスキルが貢献に関わってきます。技術は、日々新しいものが出てきますので、各個人が自分自身を磨き上げて、社内外問わず、幅広い仕事を受注できるよう、スキルアップできる場を作っていかなければいけないかなと思いますね。

―御社には技術者のレベルアップを図るための仕組みはあるのですか?


(阿部社長)

各種研修もありますが、一番大切にしているのは各個人が何をしたいのかをヒアリングして、適したプロジェクトにつけるようにサポートしています。例えば「AI開発をやりたい」とか、「サービスプラットホームを作りたい」とかですね。割と技術者は興味があるものに一生懸命になる傾向にあるので、形通りの教育を行うより、興味を持っている業務に配置できるようサポートする。そうするとOJTの中でしっかり技術は身についてくると感じています。

―自分のやりたい事を発信するとなると、聞き取る側にもスキルがいりますね。管理職にはスキルアップを図るものを提供しているのでしょうか


(阿部社長)

管理職は当然一般職とはまた違うプログラムが用意されています。コミュニケーション系はもちろんのこと、コーチングスキルなども身につけてもらうようにしています。

―今後仕事とライフイベントの両立を行う従業員の方に対してメッセージを頂けますか。


(阿部社長)

特にライフイベントとの両立で、仕事を休む事を強く意識しなくてもいいと思います。多くの方は、開発業務を行ってきて休むということに焦りがあるかもしれません。しかし、休んだからといって、突然それまで培った技術が使い物にならなくなるようなことはありません。ですから、必要な時にはしっかり休んでいただいて、逆に戻ってきた時周りでしっかりサポートしてスムーズに復帰できるよう会社が環境を整えておけばいいと思っています。

―スムーズな復帰を考えていただけるのはありがたいですね。

(コーポレート部 長谷川さん)

我々の所には、休んでいる間も含めて相談できる窓口を用意しています。万が一、何かあって長期療養する、もしくはその職場から一時的に離れる事になっても、必要以上に社員が不安にならないように、しっかり相談できるように、社員に周知しています。この窓口は育児、介護、治療等すべての事で利用できるので、どんどん活用していただきたいです。

実際まだ利用される方はそんなにはいないのですが、設置して周知する事が従業員の離職を防ぐことにも繋がると思っています。

―そこはどなたが担当しているのですか?


(コーポレート部 長谷川さん)

我々、コーポレート部のメンバーが対応しています。お休みの申請を出して頂いた時に、フォローが必要な方が把握できるので、復帰までの定期的なフォローを行ったり、復帰の時期を相談したり、その他様々な情報をここから円滑に伝えられるようにしています。

―復帰のタイミングはご本人の意向に沿っておこなっているのですか。


(コーポレート部 長谷川さん)

はい、そうです。例えば、メンタル疾患でお休みされた方等は、主治医の方から復帰の了承をもらっていただきます。そして当社の産業医と人事と連携を取り、本人の意向を確認しながら復帰のタイミングを決めます。復帰後はリワークプログラムも用意しているので、無理せずに職場へ戻ってもらえるよう工夫しています。

―リワークプログラムはメンタル疾患以外でも利用できますか。


(コーポレート部 長谷川さん)

はい、種類は違いますが、病気は病気なので利用することができます。なるべく身体に負担をかけないように日常生活に戻っていただけるようにサポートしています。あとは福利厚生の一環として団体の長期障害所得傷害保険というのがあり、会社の経費で全員加入しており個人の希望で更に手厚い保障にグレードアップ(有料)出来ます。

―40代、50代になって病気が心配になってくる時、各種制度があると安心しますね。このような制度は社員の方はご存知ですか?


(阿部社長)

実はこの長期障害所得傷害保険も従業員との懇談の中で、「うちは入れないか」という話が従業員からあって「じゃあ、来年くらいから検討しよう」と話をした流れで導入しました。

周知に関しては、従業員専用のポータルサイトがありますので、この保障の制度も含めて、様々な両立支援制度なども確認できるようにしています。しかし、実際には、従業員自らがサポート等が必要な立場になってからでないと制度を調べない方のほうが多いので、JVCケンウッド本体の方では、育児と介護のハンドブックというのを作成しています。

―ホームページで拝見させていただいて素敵だと思いました。ぜひ次回、疾病バージョンも作っていただきたいです。その他企業側で取り組んでいる事がありましたら教えてください。




(JVCケンウッド広報長谷川さん)

実はJVCケンウッド本体にはダイバーシティ推進室がありまして、多様な働き方の支援を主に担っています。最初は女性活躍推進を中心に、現在は育児、介護と仕事の両立支援も行っています。まさにこの治療と仕事の両立というところも、そろそろ手がけていきたいと考えているところでした。引き続き、こちらの分野の取り組みもしっかりと進めていきたいと思います。そして余談ですが、以前、ダイバーシティ関連のインタビュー取材のため、中国にある当社のグループ会社・Shanghai Kenwood Electronics Co. Ltd.(以下、SKE)に出張したことがあるのですが、その時に現地の社長として話をしてくれたのが阿部でした。SKEでは子育てをしながら管理職として活躍する従業員がとても多く、日本での育児と仕事の両立支援を考える上でも非常に参考になりました。

―SKEのインタビュー記事を読みました。活気があるというか雰囲気の良さそうな職場だなというのをすごく感じました。


(JVCケンウッド広報長谷川さん)

そうなんです。SKEで取材をして一番印象に残ったことは、一人一人のモチベーションがとても高いことです。例えば子育て中は仕事と育児を両立するだけでも大変なことですが、そのような中でも「成長したい」「上を目指したい!」という気持ちを強く持ち、自らのスキルを高めるために勉強を続ける方が多く刺激になりました。

―「自立していて前向きに取り組んでいる方が多いな」とインタビュー記事を読んで感じました。

(阿部社長)

中国の方は、元々女性の方がしっかりしています(笑)。実は工場の部門も5つ程あるんですが、その中の4つは女性が部門長なんです。結構「一人っ子政策」の影響もあるのか、すごく大事に育てられた男の子よりも、女性の方が「しっかりと自分で生きていく」覚悟があるのか、いろんな面でしっかりしていますね。

―そういう女性陣を束ねて上にあげて行くのも大変だったと思いますがいかがでしたか。


(阿部社長)

実は私が行った時には、もう部門長はほぼ女性で、私が登用したのは1名だけでした。その方も、最初から目立っていましたね。しっかり旗振り役を含めて業務に携わっていました。そこで培ったというより、既に備わっている方が多かったというのが実情です。それに、お国柄で家政婦が雇いやすかったり、夫婦の両親も子育てに入ってくれたりと、全体的に女性がしっかり働ける環境ができていると感じました。

―子育てを女性が一人で抱え込こまない文化というのが中国の女性が活躍できる大きな要因かもしれませんね。


(JVCケンウッド広報長谷川さん)

女性の働き方が、アジアと日本では全然違うと思いました。中国では、外食文化が浸透していたり、家事は外部に委託するのが普通になっていたりするので、日本でも女性の活躍推進を図るうえで参考に出来ると良いと思いました。

―今の日本の女性は「目指せ、スーパーウーマン」のように見えますよね。そういった他国のダイバーシティ事例もぜひ発信して、様々な人が無理をしすぎず、幸せに生きていける「日本版 治療、育児、介護を含むライフイベントと仕事の両立支援」を推進していってください。本日はありがとうございました。


2020年8月7日

聞き手:がんと働く応援団 吉田ゆり、日下部令子

文 章:吉田ゆり

写 真:株式会社JVCケンウッド広報部提供

JVCケンウッドエンジニアリング様の取り組みのご紹介はいかがだったでしょうか。 

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