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ライフネット生命保険株式会社 両立支援に対する取り組み

GHO連載企画 治療と仕事の両立支援に取り組む企業様インタビュー

高齢化社会・女性の社会進出・医療技術の進歩・定年制度の見直し等

企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。

企業を支える社員が安心して、ライフイベントと仕事の両立を図れる環境を提供する事で

経営陣と共に、企業を成長させる一員として社員が独自のスキルを使い活躍してくれることでしょう。

そこで先陣をきって両立支援の取り組みを行っている企業様の事例からヒントを得られるようインタビューし、ご紹介していきます。

2020 年10月 8日

語  り=ライフネット生命保険株式会社

     西田政之氏(取締役副社長兼CHRO)

取材・文=一般社団法人がんと働く応援団 

      吉田ゆり

写  真=ライフネット生命保険株式会社提供


インタビュイープロフィール

お名前:西田政之氏 

職業:ライフネット生命保険株式会社

   取締役副社長兼CHRO


大学卒業後、証券系投資信託会社でファンドマネージャーを経験。その後、英系投資顧問会社の法人営業を経て、米系資産運用コンサルティング会社にて事業開発担当ディレクターを務める。2004年に米系組織人事マネジメントコンサルティング会社であるマーサーへ転身。取締役クライアントサービス代表を経て、2013年取締役COOに就任。その後、2015年にライフネット生命保険株式会社に転じ、取締役副社長に就任。2018年7月より株式会社スポーツワン社外取締役、2020年4月よりネッツトヨタニューリー北大阪株式会社社外取締役を兼務。日本証券アナリスト協会検定会員。MBTI認定ユーザー。

目次

・ライフネット生命保険株式会社のがん治療と仕事の両立支援取組事例紹介

・今後の企業に求められダイバーシティとは

・なぜ組織は個と向き合うことが必要なのか


ライフネット生命保険株式会社の

       がん治療と仕事の両立支援取組事例紹介


―本日はどうぞ宜しくお願い致します。コロナの影響下、働き方はどうされていますか。

緊急事態宣言下においては従業員の約8割が在宅ワークでしたが、緊急事態宣言が解除された今は約6~7割くらいになっています。元々リモートワークを推進していたので、その適用範囲を拡大した形で対応しました。個人情報を扱う保険会社ですので、どうしても出社して処理する必要のある仕事があります。それ以外は、原則在宅ワークとしたわけですが、以前から承認プロセスをペーパレス化していたこともあり、結果的に影響は比較的小さく抑えられたと思っています。

このような取り組みをしていくと「オフィス不要説」が出てきますが、ちょっとした会話から生まれるアイディアや偶然起こる創発も、とても大切だと思います。具体的なことはまだ検討中ですが、社員同士のコミュニケーションの機会ロスを補う新たな取り組みを始めようと思っています。


―取り組みが早いですね。西田さんのいらっしゃる会社の紹介をお願い致します。

ライフネット生命保険株式会社は、2008年に開業したオンライン生命保険会社で、相互扶助という生命保険の原点を忘れずに、正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することを目指しています。特に“生活弱者”と呼ばれる人に寄り添い、社会に貢献するということが理念の根幹にあり、ほとんどの社員はその理念に共鳴して参画してくれていますので、「人や社会の役に立ちたい」と思っている社員が多く、真の意味で会社理念と社員の想いが結びついてるというところがライフネット生命保険の特徴であり、強みであると思っています。

―ほかにも他社と大きく違う特徴があるそうですね

開業当時から当社は「年齢、性別、国籍、学歴フリー」を宣言しており、定年退職制度もありません。ダイバーシティに対する考え方も進んでいて、特にLGBTQ の問題には早くから取り組んでいます。2015年には業界に先んじて ※当社調べ 保険金受取人の指定範囲を拡大し、同性パートナーも指定できるようにしました。その結果、「work with Pride」 の ”PRIDE指標”でも4年連続ゴールド受賞しています。

ー本当にダイバーシティ風土が醸成されている企業ですね


転職してきた人達がびっくりするんですが「社長をはじめとする役員と社員の間に距離がなく、友達のように気楽に話せるって凄いです!」と言われます。役職員の付き合い方は本当にフラットです。







ーフラットと言えば、初めてお会いした時、森社長が若くて驚きました

社長に就任した時は34歳です。上場している金融機関のトップとしては最年少の部類に入ると思いますが、人の能力に年齢は本当に関係ないですね。

ーそんな御社なら病気になった後でも活躍できそうですね。

そうですね、当社には社員ががんに罹患した際の両立支援制度があります。制度ができたきっかけは、がん保険を作るためのがん罹患者の方々へのヒアリングだったのですが、その際にがん治療と就労の問題の実情を知ることになります。

―具体的にはどんな事だったのでしょうか

医療技術が進歩し、がんと診断された後も退職せず働きながら治療を続けている人もいます。その一方で、会社側の理解が追いつかず「がん宣告=退職」と結びつけてしまう企業があるのも事実です。

会社側のサポートがあれば十分就労できるにもかかわらず、サポートが不十分で離職を選ぶ方々がいらっしゃることが分かりました。

―がん治療と仕事の両立に関する取り組みは始まったばかりの企業が多いですね。

そこでの学びから当社でも「就労している年齢で3人に1人ががんになる時代、他人ごとではない」と考え、治療しながら働くがん罹患者が「どうしたら生き生きと働き続けることができるのか。職場の環境、あるいは生活基盤整備をどう実現していくか」という事を念頭に、当社の新たな両立支援制度を作ることになりました。

―どのような制度を導入したのでしょうか

「がん治療をしながら働き続けることをサポートする」という事をコンセプトに、下記の制度を設計しました。

特別有給休暇の拡充

休職期間の延長

罹患手当の新設

特別有給休暇の拡充策として、保険の原点である相互扶助の考え方をヒントに「ナイチンゲールファンド」を新設しました。以前から従業員本人の病気療養やご家族・パートナーの看護を目的とした特別有給休暇で「ナイチンゲール休暇」というものがあったのですが、半分以上が使われていませんでした。そこで使われなかった分を会社全体で積み立て、がんに罹患した同僚に「ギフト」として贈る制度にしました。さらに、復職後はがん罹患前とは異なる生活環境へ対応するためのサポートが必要と考え、例えば通院の際に気楽にタクシーが利用できるようにする等、新たに生じる経済的負担を支援する目的で、休職から復職後の6ヶ月間は「ダブルエール手当」として毎月5万円を支給することにしました。

ー復帰後のサポートが手厚いのは本当に素晴らしい取り組みですね

これらはがんを経験した皆さんの声を沢山聞いた事で得られたアイディアです。自分自身も「聞いてみないと分からない事はたくさんあるな」という感想を持ちました。例えば、入院して困ったことは「可愛いパジャマがない」ことだったという話がありました。経験された方だからこそのお困りごとですよね。それからは「お見舞いに来てもらった時、ヨレヨレのパジャマだったら気持ちもぱっとしないだろうな」と想像できるようになりました。経験者の話を聞くのは両立支援を考える上で本当に大切だと思いますね。

ーその制度を導入する時に何か困ったことや反対意見はありませんでしたか。

導入時に困った事も、反対もありませんでした。ちなみに、統計上多くの人ががんに罹患するとはいえ、当社の社員数は少なくがん罹患者も限られるので「ナイチンゲールファンド」は別の疾病にも適用範囲を拡大して運用しています。

ー自社制度以外に取り組んだ事はなにかありますか。

1つは生命保険会社なので、がん治療への幅広い保障とがん治療に伴う収入減少の両方を保

障するがん保険「ダブルエール」を開発しました。

2つ目は、がん治療と就労に関する啓蒙活動を目的とした「がんアライ部」という民間プロジェクトを立ち上げました。がん罹患者に対する企業側の理解や対応方針は十分ではありません。「継続就労するためのサポートがない」、「制度があっても使える雰囲気がない」等々。そのような状況を少しでも改善したいと思い、ARUN合同会社の功能聡子さんに代表発起人に就任いただき、様々な民間支援団体やオピニオンリーダーの皆さんと一緒に活動をしています。

活動内容としては、企業人事の方々向けの勉強会や情報発信や、優れた取り組みをされている企業を表彰するアワードを開催しています。