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株式会社QLife様 両立支援に対する取り組み


GHO連載企画 治療と仕事の両立支援に取り組む企業様インタビュー


高齢化社会・女性の社会進出・医療技術の進歩・定年制度の見直し等

企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。

企業を支える社員が安心して、ライフイベントと仕事の両立を図れる環境を提供する事で

経営陣と共に、企業を成長させる一員として社員が独自のスキルを使い活躍してくれることでしょう。

そこで先陣をきって両立支援の取り組みを行っている、企業様の事例からヒントを得られるようインタビューし、ご紹介していきます。



お話を伺った方:



株式会社QLife

経営管理室

菅原 優子様




目次:

・QLifeについて

・健康診断項目の充実をめざして

・再検査費用の全額補助

・就社直後の人でも一律の傷病休職

・がん罹患者が制度を使える環境づくり

・これから両立支援をしていきたいと考える企業にメッセージ

・社会に伝えたいメッセージ


QLifeについて


―事業内容を教えてください

 

エムスリーグループの一員として、メディアを活用し医療業界の様々な課題を解決する、メディカルマーケテイングや被験者リクルーティングサービスなどを実践しており、がんやIBD、各種遺伝性疾患など、特定の疾患に特化したサイトを立ち上げて生活者の方へ正しい「医療情報の提供」と「病院検索」「薬や治験の情報提供」を主に行っています。


―どのような社員構成ですか


若い世代が中心です。20代後半から40代が多く、反対に50、60代の社員は少数という社員構成になっています。


―若い世代が中心なのに、両立支援を始めたのはなぜですか


きっかけは代表取締役ががん防災マニュアルを目にしたことでした。がんメディアとして情報発信をしているのに、社内でがん罹患者が出た時の対策や制度の整備が整っていなかったので、この機会に準備を始めることにしました。

QLifeのがんに対する備えについては、1つ目が教育啓発で、がん罹患者に対する会社の姿勢を共有しながら同僚でがんになった人がいたらどう動くかに対する理解向上。2つ目が早期発見に努める。3つ目が両立支援として治療と就業の両立ができるように施策を講じること。以上を3本柱としています。

教育啓発に関してはまだ着手途中ではありますが、手始めに今年の3月にがん防災セミナーをウェビナーにて開催しました。



健康診断項目の充実をめざして


―なにから始めましたか


まずは健康診断の法定項目以外のオプション項目の充実を目指しました。もともと女性社員が多いこともあり、婦人科検診(乳がん・子宮頸がん)については全女性社員に受けてもらっていましたが、がん防災という観点からは胃がん、肺がん等のがん検診を増やしたいと考えました。そこで、親会社であるエムスリーのPatient Support グループに協力いただきました。Patient Support グループでは医師に5大がんの発見につながる検査項目を調査するというアンケートをとっていましたので、その情報からオプションで受診できるよう検査項目の選択肢を増やしました。


―検査項目を増やしたことに社員の方の反応は

 

おおむね好評です。ABC検査(胃がんのリスクがわかる)を希望で追加できるようにしたのですが、ほとんどの若い社員が受診してくれました。年齢が若い人は健康診断項目の受診年齢制限でバリウムを飲むことができないので、これまで胃がんリスクの検査がありませんでした。それがABC検査だとこれまでの血液検査に追加するだけで胃がんリスクの高さがわかります。数名の社員は胃の洗浄が必要と診断され、「やらなかったら健康体と思っていた。機会がもらえてよかった」という声が上がりました。


―検査項目を取り入れるにあたって工夫した事は


社員にどうしてこの検査項目ががんの早期発見に有効なのかを納得してもらうために根拠を示すようにしました。エムスリーグループの医師の意見であるなど出所を示したことで、情報の信ぴょう性を高めました。


―社員の方の意識は変わりましたか


まだ導入したばかりなので、社員の意識が変わったとまでは言えませんが、健康に対する意識はもって欲しいと思っています。実際、がん防災の第一人者であられる押川勝太郎先生とがんと働く応援団の吉田様にご講話いただいたがん防災セミナーを受けた後のアンケートでは、がん検診に対する気持ちの変化があったかという問いに対して「今後、継続して必ず検診を受けたい」と回答した社員が85%でしたので、そういった思いがその場限りにならないようにリテラシーを高める取り組みを継続的に行いたいと思います。


再検査費用の全額補助


―更なる制度として取り入れたことは


定期健診で要再検査になった時は、再検査費用を全額補助する制度を作りました。一年度あたり一回を上限とし、再検査が必要になった箇所ごとに費用を補助しています。例えば、 婦人科検診と内科で要再検査になった場合は、両方の費用が全額補助になります。


―なぜ再検査の全額補助を制度にしたのですか


全額補助は再検査に行くきっかけになればいいと思ったからです。今まで定期健診受診後に要再検査を受けているのか追いかけることはしてきませんでした。しかし社員にとっても再検査して何もなければ安心できますし、何か見つかっても放置するより早く治療が開始できます。また、会社としては、全額補助にすることで診断結果を共有してくれるので、後追いが出来るという面もあります。


就社直後の人でも一律の傷病休職


―他に取り入れた制度はありますか


就業規則についても一部改訂を行いました。病気になると私傷病休職になりますが、これまでは勤続年数によって休める期間が異なっていました。ただ、それでは入社した直後の人がお休みできないので、一律最大6か月休職できるように変更しました。6か月の休み方も連続や通算など、柔軟に対応する予定です。今後、実際休職する社員が出た時は本人と周りの社員はどう行動するか、マネジメントや会社はどう行動するかのガイドラインを作っていきたいと考えています。


―心がけていることはなんですか


社員の為になることです。福利厚生の目的は社員が長く働ける事、病気になったからやめるのではなく、病気になっても働き続けられる環境を整えることを目指しています。社員が使いやすいもの、実用的なものを導入しようと考えています。



がん罹患者が制度を使える環境づくり


―これからの課題はありますか


セミナーを受けた時にはがんに対する備えが必要だという意識を持ちますが、その意識を一度限りにしないことと、両立支援策を手厚くすること。更には社員本人が使いたいと思える環境作りが課題です。もし私自身ががんになったら会社に言えるだろうか、上司にだったら言えるのかな、同僚にだったらどうだろうと考えてみると、会社や周りに言える環境を整えることが必要だと思います。そうでないと、会社が制度を準備してもなかなか使えないかもしれない。これはがんに関わらずですが、会社や周りに相談できる環境を整えていきたいと考えています。


―会社として目標は


病気のせいで働けないのはもったいないと考えています。せっかく入社していただいたので能力を活かして欲しい。そのためQLifeでは長く働いてもらうということを目標にしています。会社にとっても優秀な社員ががん罹患によって退社してしまうのは大きな損失ですので、投資対効果を考えても今のうちから制度や環境を整えておくことは重要なことだと考えます。


これから両立支援をしていきたいと考える企業にメッセージ


何が必要か、まずは情報収集から始めるとよいと思います。例えばがん防災マニュアルとか、厚生労働省や製薬会社のガイドブック、がんサバイバーの方が発信されている情報、産業医に意見を伺う、他の会社はどんな目的を持って取り組みを実施しているのか見てみる。それによって自社では何が足りていないのか、起きそうな問題を想像できると思います。

ゼロから制度を考えること、大きな企業と同じ制度を取り入れるのは難しいので、取り入れ方の参考として、似たような環境・背景がある会社、同じくらいの社員数の規模の会社の取り組みを見るのはよいと思っています。



社会に伝えたいメッセージ


がん防災セミナーで押川先生に教えていただいたように、今はがんになっても、がん=死ではありません。早期発見の為にまず健康診断を受けることが大切だと思います。企業内の担当者としては、まずは一年に一回の健康診断の受診率を上げることから始めてみてもよいと思います。


―がん罹患者が出る前に、すでに両立支援に向けた取り組みを始めていらっしゃるのが素晴らしいですね。予防として、健康診断と再検査の補助など会社が取り入れやすい例だと思いました。今後とも御社のご発展をお祈りしております。本日はどうもありがとうございました。


2022年8月30日


聞き手:がんと働く応援団 小野順子

文 章:小野順子

写 真:株式会社QLife提供


企業の取り組みのご紹介はいかがだったでしょうか。 

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