生活とがんと私 Vol.23 武田政彦さん
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長寿大国日本。生涯を通して2人に1人ががんを経験すると言われ、そのうち3人に1人は就労している年齢でがんと診断されています。
いざ自分がなった時、そして周囲の誰かがなった時、慌てず対処するためには、経験者のお話は、ご自身や大切な人がその立場になった場合、どう対処するべきかを考える貴重な機会になります。
"がん=働けない(或いは、離職・退職)"ではなく、それぞれに工夫されている体験談をお届けしていきます。
インタビュイープロフィール

お名前:武田政彦さん
職 業:会社員
がん腫:脳腫瘍(膠芽腫)
グレード: グレード4
治療期間:2019年〜現在
治療内容:放射線療法、化学療法
副作用:脱毛、倦怠感
就労状況:入院以外休まず勤務
企業規模:大企業
利用した企業制度:脳ドック検診制度、有給休暇(年次、半日単位、時間単位)、積立有給休暇、フレックスタイム、時差出勤, 在宅勤務
利用した公的制度:高額療養費制度, 限度額適用認定, 健康保険組合の付加サービス, 医療費控除
不測の病に直面しながらも、客観的視点と周囲への気づかいで「治療と仕事の両立」を実践されている武田さん。上司や同僚へ自身の状況を独自の工夫で共有し、周囲の理解と協力を引き出す「高次元の両立術」に迫ります。
目次
予兆なき発覚、そして「ありのまま」を受け入れる
GHO: 本日はありがとうございます。脳腫瘍、それもグレード4という診断ですが、がんが見つかる前に何か兆候はあったのでしょうか。
武田さん: 全くなかったです。会社の制度で5年に1度の「脳ドック」があり、軽い気持ちで受けたのがきっかけでした。統計的にこの段階で見つかるケースは極めて稀で、まさに「神がかり的」なタイミングでした。告知の際も、画像を見て「ああ、これは腫瘍だな」と。まずは事実をありのままに受け入れることから始まりました。
GHO: 確定診断までの間に、痙攣(けいれん)で倒れられたとも伺いました。
武田さん: そボーイスカウトの活動中に倒れ、救急搬送されました。3cmもの腫瘍があれば本来いつ痙攣が起きてもおかしくない状態だったそうです。一人の時だったらと思うと……。生かされている幸運を、どこか客観的に、そして冷静に捉えていました。
「自己開示」と周囲への配慮
GHO: 生検手術後、わずか1週間で復職されています。周囲への伝え方が非常にユニークだったそうですね。
武田さん: はい。自分の状況を隠すのではなく、スライド資料を作成してチームに「プレゼン」したのです。生存率などの厳しいデータも包み隠さず出し、自己開示をしました。
GHO: 自分の病気をプレゼンする、その意図は?
武田さん: 隠してコソコソ休むのは、自分にとっても周りにとってもストレスです。情報をクリアにすることで、相手もどう接すればいいか迷わずに済む。私がドンと構えていれば、周囲も自然と協力的なペースに巻き込まれてくれる。これも一つの、周りへの配慮だと思っています。
「自分の健康を守りながら働く」
GHO: 放射線治療の30日間も、お昼休みを使って通院されていたとか。
武田さん:職場から徒歩10分の病院でしたので恵まれていましたね。病院側の配慮もあって放射線治療の予約を昼休みに合わせてくれたのです。抗がん剤は飲むタイミングを仕事に支障が出ないよう調整しました。無理せず「自分の健康を守りながら働く」ことを心掛けていました。
GHO: 常に「今できる最善」を選択されていますね。
武田さん:脳腫瘍は天候や気圧で体調が左右されることもありますが、幸い私は今のところ動けています。「自分の身体を維持しつつ仕事も出来る範囲で頑張る。」そうすれば、病気に心を支配されずに済みます。
「I shall return」私は必ずここに戻ってくる
GHO: プレゼンの最後に、非常に印象的な言葉を添えられたそうですね。

武田さん:マッカーサー元帥の言葉を借りて、「I shall return(私は必ずここに戻ってくる)」と宣言しました。治療のために一時的に休職するが、必ず復帰するという強い意志を示したかったんです。
GHO: 復帰への強い意志を示す素晴らしい宣言ですね。では、同じように仕事と治療の両立に悩む方々へメッセージをお願いします。
武田さん:当事者になって初めて見える世界があります。一歩踏み出すのは勇気がいりますが、伝えるチャンスがあるならぜひ伝えてみてください。自分の状況を客観的に捉え、できる範囲で社会と繋がり続けること。それが「がんと共に生きる」力になると信じています。
「がんに対する理解を深めたい」まずは社内から
GHO: 最後に、両立に悩む方々へのアドバイスとあわせて、企業側へ伝えたいことはありますか。
武田さん: 会社には感謝しています。仕事があったから治療ができた。治療費もかかりますからね。
体力があるのなら、続けられる状況ならば、仕事を続けてほしい。社会とのつながりは、治療の大きな力になります。制度を正しく調べ、活用すること。
人事や総務の方には、ぜひサバイバーが実際に経験した事例を聞く機会を増やしてほしい。(治療と仕事の両立)制度があっても仕組みを作るときに経験者がいないと想像で作っていることもあり、使えない、使いにくいこともあるのです。それではもったいない。
同じ病気、同じ治療であっても人さまざまで、症状も含めてバラバラです。世の中が理解してくれたらいいなと思っています。
治療しながら働きやすい環境にするために、理解を深めることをしていきたいですね。まずは社内から。
GHO: 現場のリアルな声こそが、制度をより良くするチャンスということですね。
武田さん: その通りです。サバイバーの声を聞く際、どうか「自分とは別世界の出来事」とは思わないでほしい。「ようこそ、がんワールドへ」と私は言いたい。対等な立場で、「たまたま今は、まだがんになっていないだけ」という認識を持って聞いてほしいのです。当事者の視点を自分事として捉え、共に考える。その姿勢こそが、真の「合理的配慮」の第一歩になるはずです。
GHO:「対等であり、いつ誰が当事者になってもおかしくない」。その視点が企業の土壌を変えるというメッセージ、深く胸に刻みました。武田さんの冷静な戦略と、社会制度への前向きな視点は、多くの働く仲間の未来を照らす道標となるはずです。本日はありがとうございました。
2026年2月27日
語り=武田政彦氏
取材・文=がんと働く応援団 脇田恵
編集=齋藤宏晃・小林由美子
写真=武田政彦氏提供
※本記事はがんを経験された個人の方のお話であり、治療等の条件や判断は1人1人異なります。全ての方にあてはまるものではありません。
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