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【一人で悩まない、抱えない。専門家たちの活用方法】  第二回:スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラー ~お子さんとの向きあい方~

更新日:2020年9月2日



がんの患者さんやサバイバーさんを病院内外で支えている専門家の方たちをご紹介するシリーズです。

その方たちのことを少しでも身近に感じていただいて、いざという時の頼り先として知っておいていただければと思います。


今回は、がんと働く応援団でも活躍いただいているお二人の専門家にご登場いただき、お子さんとの向き合い方についてお話いただきます。


  • 武田亮子さん:社会福祉士、精神保健福祉士、国家資格キャリアコンサルタントの資格をもち地域統括支援センターでソーシャルワーカーとしてお仕事をされています。都立高校のSSWとしてのご経験もお持ちです。


  • 宮崎加奈子さん:臨床心理士のお仕事をされ、前回もご登場いただきました。実は小学校のSCとしてもお仕事をされています。



<目次>

1.お子さんへの伝え方

2.伝えた後のケア

3.ソーシャルワーカーとソーシャルカウンセラー

4.最後に

【1.お子さんへの伝え方

Q:武田さんご自身も、がんサバイバーでありお母さまでもいらっしゃるのですよね?

武田さん(武):そうなんです。2016年に稀少がんである十二指腸がんが見つかり、13時間におよぶ手術、その後補助療法として抗がん剤治療をおこないました。おかげさまで今は落ち着いており、ソーシャルワーカーとしての相談業務も違う形はありますが継続させていただいております。子供はがんの診断当時、19歳の娘、16歳の息子、9歳の娘でした。


Q:具体的にはどのようにお子さんにお伝えになられたのですか?


武:少し悩んだのですが、息子はちょうど思春期真っ只中。しかし私の体調があまりにも悪く自分の言葉で説明できる状態でなかったこともあり、思い切って普段頼りない息子を術前のドクターの説明時から同席させたのです。ドクターが絵を描くなどして丁寧に説明してくださったこともあり、最後には息子自ら質問までしていました。高校生の息子を一人の男として、重要な役割を担わせたことで、家族からも頼りにされ、その数か月間でぐっと大人になった様子が見られ自分の選択が正しかったと思えました。


Q:それは衝撃的な告知方法でしたね(笑)。大人として扱われたことが自信につながったのですね。

武:私の場合、家族への告知は成功しましたが、小さいお子さんのいる家庭の場合、それはそれでデリケートです。小学校のカウンセラー等、周囲の利用できる支援をうまく活用し、お子さんの性格も考慮したうえでお話しされるとよいかと思います。

Q:確かに、もっと年齢の低い小さいお子さんの場合、どのように伝えるのがいいのでしょうか?

宮﨑さん(宮):小さいお子さんの場合、「病気であることや病名を黙っておくのがいいのでは?」と思われる方が多いのですが、可能な限り伝えることをお勧めしています。というのは、お子さんは、敏感に親の変化を感じ取っています。そして「お母さんなんて死んじゃえ」「いなくなっちゃえ」と軽く考えた事が現実になってしまったのではないかと自分を責めてしまいがちなのです。そうならないように、

3つの「C」を伝えることが大事といわれています。

・がんという病名(Cancer)、

・うつらないこと(not Catchy)、

・そして誰かのせいではないこと(not Caused)です。

そして、今すぐ死んでしまうわけではないこと、そのために治療をしていること、などを付け加えてあげることもよいと思います。もちろんご家庭の事情、などによってタイミングはそれぞれでかまわないと思います。

宮:本当のことを伝える場面は、親子の信頼関係が生まれる大切なチャンスとなりますので、時間をしっかりとって伝えていただければと思います。伝え方になやまれるようでしたら、こちらのHopeTreeという団体のサイトに、さまざまなツールが用意され、考え方が整理されているので、参考にされると良いと思います。私自身も勉強させていただいた信頼のおける団体ですのでおすすめです。





:なかなかお子さんにお話しできない、という方の場合、実はご自身が病気のことを受け入れられていないケースもあります。その場合は無理せず、まず自分自身がこの病気とどうむきあっていきたいのか、焦らず、自分と向き合う時間をもつことも大事になさってください。私の場合は、一刻も猶予がない状態だったので、なし崩し的に伝えてしまいましたが(笑)。


【2.伝えた後のケア

Q:武田さんのお子さんの場合は、しっかり受け止められたようですが、そうでないお子さんもいらっしゃいますよね。

宮:当然、取り乱してしまうお子さんもいらっしゃるとおもいます。その場合、怒ったり泣いたりするのは問題ないのだということを伝えて、お子さんを安心させてあげていただければと思います。親がお子さんのことを見ている、ということが伝わるだけでも大きく違ってきます。

一方で、思春期のお子さんの場合は、「絶対周りに知られたくない」「かわいそうだと思われたくない」と無関心をよそおうこともあります。その場合は無理に介入しようとせず、その子が必要と思ったときに受け止められるよう、周りがそっと見守ってあげる対応が良いと思います。

武:そうですね。当時9歳だった末の娘も、実は怖かったようです。夫に対して反抗的な態度をとることもあったようです。ようやく今(13歳)になって、病気のことを聞いてくるようになりました。子どもにとっては、つらい時期があったかもしれないけれど、本人自身に乗り越える力がある事を信じることは大切だと思います。

Q:その後、治療しながらの生活を送るうえで子供との接し方の工夫はありますか?

宮:できれば、少しでも「お手伝い」ができる場面を作ることをお勧めします。お子さんを、病気から遠ざけてしまうと、疎外感や無力感で自信をなくしてしまいがちなのですが、「お手伝い」をすることで、親の闘病に役立てるという経験になり自信につながるからです。

実際に家事ができる年齢でなくても「今、お母さんは具合が悪いから、元気になるまで”静かにする”お手伝いをしてね」という風に、治療・療養に協力してもらうのもいいと思います。お手伝いは、工夫次第で、その子に合わせて説明して参加してもらうことができます。

武:私の場合は、術後8か月間くらいは何もたべられなく生きるのに必死という状況だったので、本当に家族に助けられました。3人の子供が家事を役割分担してくれていました。私の友人は、ほかに頼る人がいなくてなんと義父に助けてもらったそうです。できればご自分ひとりで悩まないで、家族でも友人でも頼れる人は頼って、短時間でも子どもの相手や家事の手伝いなど、してもらえるといいですね。ただ本当に孤立されている母子家庭の方からのご相談の場合などは、一時的にお子さんを預かる場所を一緒に探すこともあります。


Q:ほかに気を付けるべきことありますか?

宮:「子供は学校に行かせないほうがいいのではないか」と相談されることもあるのですが、学校にいったり部活をしたりという今までの社会生活を続けさせてあげることが、お子さんの安心感につながることが多いということも、知っておいていただけるとよいと思います。

「(親の病気のせいで)いじめられるのではないか」とか不安に感じる方も中にはいらっしゃいます。もし担任の先生が信頼できる方であれば、家の事情を伝え、それとなく見守ってもらえないかお願いすることは一つのよい方法だと思います。


【3.ソーシャルワーカーとソーシャルカウンセラー】

Q:よく聞くスクールソーシャルワーカー(SSW)とスクールカウンセラー(SC)の違いについてもう少し詳しく教えていただけますか。

武:SSWは都道府県などによって違いはありますが、たいてい地区や学校ごとに設置され学校を支援しています。一般的には、心のケアに対応するのはカウンセラー、それ以外の福祉や就労に関する課題についてはソーシャルワーカーという役割分担になります。どちらも、学級担任や養護教諭等と連携して生徒を支援してい