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【一人で悩まない、抱えない。専門家たちの活用方法 第二弾】  産業医(前編) ~治療をしながら働く人の応援団~ 

更新日:2023年9月13日


がんの患者さんやサバイバーの皆さんを病院内外で支えている専門家の方たちをご紹介するシリーズ第二弾です。その方たちのことを少しでも身近に感じていただき、いざという時の頼り先として知っておいていただければと思います。



職場で働く人を対象に仕事をする“産業医”、元気に働けている時には意識することがないかもしれませんね。実際に接する機会は、病院で働く医師よりも少ないという方が大半ではないでしょうか。

今回は産業医のほか、北里大学医学部衛生学の講師、北里大学病院総合診療科トータルサポートセンター両立支援専門外来の医師としてもご活躍の武藤剛医師から、両立支援に対する思いを伺いました。





プロフィール:武藤剛さん。医学博士、総合内科専門医、産業衛生専門医、労働衛生コンサルタント、社会医学系指導医、難病指定医の資格を持つ。病気を一つの個性と捉え、人生とその個性を両立するための支援や仕組みを活用できる社会の実現に向けて取り組んでいる。








〈前編目次〉




【1.産業医について】

産業医とは、医師としての専門的な立場から、職場で働く人の健康管理やwell-beingの推進を担って予防医学を実践する医師を指します。労働安全衛生法に基づき、事業者は事業場の規模に応じて産業医を選任し、働く人が安全かつ安心して仕事に取組めるような環境整備を行います。

産業医の仕事には、働く人の疾病予防・健康推進を目指すことに加え、職場全体が自然とwell-beingの醸成を目指せるような職域づくりに関する専門的助言を行うことも含まれ、近年では健康経営の実践に関わることも少なくありません。




‐武藤先生のご経歴について教えて下さい。


2007年に千葉大学医学部を卒業後、国立国際医療センターで臨床研修医(内科系、リウマチ膠原病内科)として働きました。その間、予防医学を実践する医師として当初より関心が強かった産業医の免許を取得し、初期研修終了後,月1~2回の非常勤(嘱託産業医)を3~4年経験しました。その後ご縁があって、ある大企業で、専属産業医を2年ほど勤め、産業保健活動の仕組みづくりから、企業で働く人全体に対する様々な予防医療に従事しました。


2018年からは日本医師会の国際保健プログラムとして、米国をはじめとする海外の両立支援の事例調査を目的にハーバード大学へ留学する機会を得ました。


帰国後、その経験をもとに北里大学での実践、研究活動に取り組むとともに、将来の医師として活躍する医学生に対する社会医学教育(両立支援や医療コミュニケーションなど)にも携わってきました。同時に、業界を問わず様々な企業における非常勤の産業医として現場での実践活動も続けています。



‐産業医の仕事のどんなところに魅力を感じていますか?


100人の患者さんがいたら、同じ診断名であっても100通りの人生があります。

人生をどのように生きていくかは個別性であり、その個別性にいかに寄り添った医療を実践するかを、特に臨床医学教育で学びます。ただ、病院では患者さんの数に比して医師の人数はとても少ないため、患者さん一人一人にかけられる時間は限られてしまいます。一方、産業医も社員数に比して人数が多いわけではありませんが、医療機関の臨床現場に比べれば一人当たりの面談時間は確保しやすいですね。病気の予防等だけでなく、その人自身や職場でのさまざまな関係性などもう少し幅広く捉え、病院より時間をかけて関われることが産業医の面白さであると思っています。




【2.武藤先生のオリジナリティ】


‐北里大学病院の就労支援外来で勤務されることになった経緯について教えて下さい。


アメリカから帰国後、北里大学へ赴任しました。ちょうど北里大学病院が病院での両立支援を進めるモデル事業に採択され、私の前任の江口尚先生(現、産業医大教授)を中心に両立・就労支援外来(総合診療科)が立ち上げられ、トータルサポートセンターのソーシャルワーカーチームをはじめとする院内多職種連携チームによる取組みが始まりました。江口先生の異動に伴い、この外来を引き継いでいます。

神奈川県は労働局や産業保健総合支援センターを中心に、全国でも先駆けた‘神奈川モデル’として、県内4医大病院・2労災病院を核とした医療機関における両立支援の実践と情報連携活動が行われてきています。全国でも様々な病院が両立支援の取り組みを進めていて、患者さんのニーズを救い上げたいという思いを持つ病院は増えてきています。

一方患者さんの立場では、病院で仕事について相談することを遠慮する場合も多いかもしれません。限られた時間の中で、主治医から治療方針や今後の検査や治療について説明を受けたりしますからね。それでも一言、「この治療を受けることが、自分の仕事にどう影響するか心配なんです」と話して下さったら、主治医に両立について相談したり、職場と情報連携したりするきっかけになります。

また、主治医に伝えられない場合、がん拠点病院には相談支援センターが、中規模程度の病院にも患者さんの社会生活を支援する窓口がありますから、そういった所に立ち寄っていただければと思います。



‐産業医としては、日々どんな視点でお仕事をされていますか。


健康経営のマインドに理解があり、賛同してくれる経営者の方や人事の方、そういう職場を少しでも増やすにはどうしたら良いか?という視点を持ち、そのための土壌づくりに取り組んでいます。私が診られる患者さんには限りがありますし、そこだけで完結する話ではありません。パブリックヘルス(公衆衛生)領域の言葉「誰も取り残されない(No one left behind)」が産業保健に関してもまさに必要だと思っています。


がんに関しては働き方改革と連動して動いてきていて、少しぐらい支障があってもできる仕事をやっていこう、という前向きな考え方が企業側からも受け入れられるようになってきました。ここが大事なところです。今はメンタルヘルスに関してもポジティブに受け止め、よりストレスの少ない職場づくりを目指し、実践する企業が増えてきました。

自身の病気を一つの個性と捉えるなら、それをどうやって人生において両立していくか?というところを支援できる仕組みを広めてきたい、というのが大きなコンセプトです。ちょっと格好良く言い過ぎかもしれませんが、目指すところはそういった形です。私自身について言えば企業と病院、両方の視点でみられること、また、いろいろな取り組みをしていることがオリジナリティかなと思います。



‐産業医としての立場、病院で患者さんを診る医師という立場、違いはどんなところですか?

一番の違いは対象です。産業医はその会社で働いている社員の方、30代~50代の方がターゲットになることが多いです。一方、病院には10代~20代の学生さんをはじめ、これから仕事を探す方も来ます。

小児がんや先天性心疾患で通院していたり、再手術を控えているAYA世代の方は、「病気があるのだけれど、就職活動の時に話さなくちゃいけないのか?」、「話したほうがいいのか?」、「話したら採用されないのでは?」といった不安を抱え、困っている方が多くいることを実感します。しかし、それに対する答えがあんまりないんです。桜井なおみさんがCANSOLをはじめとする幅広い取組みで周知されていますが、現状、一般の病院ではなかなかそこまで対応できていません。



‐個別具体なケースでは、簡単に答えが出せない不安や悩みを抱えていらっしゃる方も多いのですね。個々人の最適解が異なる事柄について、話してみる、相談してみる、という行動を起こすということは、1人で抱え込まないためにも大切なアクションですね。

後編では、治療に伴う困りごとへの産業医の対応方法や、病院や会社以外での活動について伺います。



取材、文:一般社団法人がんと働く応援団 碇一美



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